#189 「2025年度に注目したい経産省の補助金――恩恵を受ける業種・企業の展望」

経済産業省(以下、経産省)は例年、産業政策・エネルギー政策・中小企業政策などさまざまな分野で補助金を公募し、民間企業や研究機関が活用できるようになっています。2020年代後半に向けては、以下のようなテーマや政策が注力される傾向が強く、結果として関連する業種・企業が恩恵を受けやすいと考えられます。

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1. 脱炭素社会の実現・GX(グリーントランスフォーメーション)関連

再生可能エネルギー

太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの発電設備導入や開発に対して、補助や低利融資の制度が引き続き注目されます。また、関連する建設・エンジニアリング・運営管理事業者なども恩恵を受ける可能性があります。

• 水素・アンモニア燃料電池

次世代エネルギーのコアとして、サプライチェーン構築(製造・輸送・貯蔵)や燃料電池車・燃料電池システムなどに関する開発・実証事業が継続して支援される見込みがあります。特に製造業やエネルギー関連企業が中心ですが、水素製造を支える機器メーカー・プラントエンジニアリング企業なども含まれます。

• 蓄電池・次世代電池

電気自動車(EV)や再生エネルギーの普及に欠かせないバッテリーの開発、生産ラインの整備、リサイクルなどに対する補助が期待されます。国内外の電池メーカーや、自社で内製化に取り組む自動車会社・電機メーカー、リサイクル企業も対象になりやすいです。

• カーボンリサイクル・CCUS

CO₂を回収・利用・貯留(Carbon Capture, Utilization and Storage)する技術開発や事業化に向けた公募補助は引き続き行われる可能性が高く、化学メーカー、インフラ企業、エネルギー企業などが中心的に関わると考えられます。

 


2. 産業構造の高度化・デジタル化支援(DX推進)

• 製造業のスマートファクトリー化

産業用ロボット、IoTデバイス、5G通信基盤などを活用した生産現場の高度化に取り組む企業への支援が期待されます。機械メーカーやシステムインテグレーター、ソフトウェア開発企業などが対象となりやすいです。

サプライチェーン強靱化・半導体関連

半導体製造装置や関連素材の内製化を促進し、サプライチェーンの安定化を図る政策が続くことが見込まれます。国内外の半導体メーカーや、エレクトロニクス関連の部素材メーカー、装置メーカーが補助金を活用しやすいでしょう。

• 中小企業向けDX支援

中小企業が在庫管理や販売管理などのシステム化、クラウドサービス導入などを行う際の費用補助やコンサル費用の助成が行われる可能性があります。ITベンダー、クラウドサービス提供企業、コンサルティング企業などが間接的に需要を取り込みやすいです。

 


3. 地域活性化産業クラスター形成

• 地方創生・地方拠点強化

地方の優位性を活かした産業振興や新規事業に対し、自治体と連携して補助金を出すケースが想定されます。農水産業や地域観光、伝統産業などとコラボレーションできる企業が対象になりやすいです。

• スタートアップ支援

地域産業クラスターの形成やスタートアップ育成を目指す施策の一環として、先端技術やユニークなビジネスモデルを持つベンチャー企業が補助の対象となることがあります。特にAI、ロボティクス、バイオテックなどの分野が注目されやすいでしょう。

 


4. エネルギー安全保障・資源の安定供給

レアメタル・重要鉱物の確保

EV・蓄電池・半導体の需要が高まる中、日本国内の資源確保やリサイクル技術の確立、海外鉱山の取得・開発などに関して、政府として引き続き支援する動きが想定されます。商社や資源開発企業、リサイクル関連企業が恩恵を受けやすいでしょう。

• 省エネ・エネルギーマネジメント

企業や工場、ビルの省エネルギー化や、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入に対する補助は恒常的に行われており、今後も継続して支援対象になると考えられます。ビル管理会社やシステムインテグレーター、機器メーカーなどが活用しやすい制度です。

 


5. 研究開発支援・イノベーション創出

• 先端技術R&D

AI・量子技術・バイオテクノロジー・先端材料(カーボンナノチューブや新素材)などに対する研究開発費の補助金公募は引き続き行われる可能性があります。大学や研究機関と連携する大手メーカー・ベンチャー企業も対象となります。

• 大学・研究機関との産学連携プロジェクト

オープンイノベーションの推進を狙い、大学・公的研究機関・民間企業が共同で行うR&Dプロジェクトに対しての補助や助成が拡充される傾向にあります。特定の技術領域でリードしている企業やスタートアップが参画しやすいでしょう。

 


まとめ

1. 脱炭素やGX関連

水素・再エネ・蓄電池・カーボンリサイクル等に携わる企業。

2. DX推進

製造業のデジタル化、サプライチェーン強靱化、IT導入支援を行う企業。

3. 地域活性化産業クラスター

地方創生・スタートアップ育成事業を行う企業や自治体連携プロジェクト。

4. エネルギー安全保障・資源確保

レアメタル・重要鉱物リサイクルや省エネシステム導入支援。

5. 先端技術の研究開発

AI・量子・バイオ・新素材などの研究開発企業や産学連携プロジェクト。

 


経産省補助金は基本的に政策目標に合致する企業・プロジェクトが選定されるため、「国がどの分野を将来の基幹産業と考えているか」を読み解くことが重要です。上記の傾向を踏まえたうえで、該当分野の技術や事業計画を持つ企業が今年度も恩恵を受けやすいと言えます。