ANAホールディングス株式会社(以下、ANA)は、2024年3月期の決算において、売上高2兆559億円、営業利益2,079億円を計上し、過去最高益を大幅に更新しました。 営業利益率も初めて10%を超え、同社の経営戦略が奏功したことを示しています。
国際線旅客収入の躍進
特筆すべきは、国際線旅客収入が7,281億円となり、初めて国内線旅客収入を上回った点です。 これは、訪日需要の高まりと日本発需要の積極的な取り込みが寄与しています。路線ネットワークの拡充も奏功し、羽田=北京線や羽田=上海線の再開、成田=パース線の新規就航、成田=ホノルル線のエアバスA380型機「FLYING HONU」による毎日2往復運航などが実施されました。
国内線旅客の堅調な推移
国内線旅客収入も前期を上回りました。「ANA SUPER VALUEセール」の実施や、週末・連休を中心とした機材の大型化など、レジャー需要の喚起策が奏功しました。また、能登半島地震の復旧支援として、羽田=能登線の臨時便運航や割引設定、救援物資の輸送協力など、社会的責任を果たす取り組みも行われました。
貨物事業の現状と課題
国際貨物事業では、北米=アジア・中国間の需要取り込みに努めたものの、半導体・電子機器、自動車関連をはじめとした主要産業の需要減退により、輸送重量・収入ともに前期を下回りました。ただし、2019年度と比較すると約1.5倍の売上高を維持しており、一定の成果を上げています。
LCC事業の成長
Peach Aviation株式会社(以下、Peach)では、国際線での訪日需要の積極的な取り込みや、国内線でのレジャー需要の好調な推移により、旅客数・収入ともに前期を上回りました。関西=上海線や羽田=上海線の再開、関西=高雄線の再開、関西=香港線や関西=台北線の増便など、路線ネットワークの拡充が寄与しています。
その他事業の動向
航空関連事業では、外国航空会社からの空港地上支援業務の受託増加や、旅客需要の回復に伴う機内食関連業務の増加により、売上高2,988億円(前期比20.9%増)、営業利益67億円(同190.3%増)を達成しました。旅行事業では、海外旅行の需要増加が見られ、売上高785億円(前期比6.4%増)、営業利益13億円(前期は営業損失2億円)と黒字転換を果たしました。商社事業では、空港物販店「ANA FESTA」や免税店「ANA DUTY FREE SHOP」の好調、食品事業でのバナナ取扱高の増加などにより、売上高1,179億円(前期比14.2%増)、営業利益45億円(同30.3%増)となりました。
配当金の増額と今後の展望
計画を上回る利益計上を受け、1株当たりの配当金を50円に増額し、5期ぶりの復配となりました。 今期は人材への投資や需給環境の変化に対応しつつ増収を図り、営業利益はコロナ前の最高益を超える1,700億円を見込んでいます。さらに、2025年度には営業利益目標2,000億円以上を必達目標とし、2026年度以降の本格的な成長を目指しています。
まとめ
ANAは、2024年3月期において過去最高益を達成し、国際線旅客収入が初めて国内線を上回るなど、事業構造の変化が見られます。今後も人材投資や需給環境の変化に対応し、持続的な成長を目指す姿勢が示されています。